2016年7月 月山&鳥海山

参加:ヒメリーダー、マタギさん、カネゴン(記)

7/2朝、鶴岡駅前バス停ベンチに座っていると、向こうからマタギさんが歩いてくるのが見えた。ヒメは深夜バスで向かっているので、この時間に姿が見えないということは、交通渋滞などで遅れているのかもしれない。念のためにマタギさんが電話してみる。え?待ち合わせ場所が違う?あれ?あー、でも私たちがいるところもバスは来るらしいし、いいじゃないのぉ~ということで、皆さん、約束どおりに集合した。

 バスに40分程度乗車。下車した場所は隋神門。木々が生い茂り、深い森が神社の神秘的な空気を演出している。ここから歩行開始。当初はゆっくりと各地を参拝しながら歩く計画であったが、午後から天候が下り坂であることから、とっとと前に進むことをリーダーが決断。計2446段の階段をひたすら上る。本日の小屋では自炊・寝具持参の計画なので、荷が久しぶりに重い。軽くするには酒を抜けはいいことは分かってはいるが、せっかく前日に手に入れた山形地酒は美味しく飲みたいから、抜くに抜けない。いやー、それにしても朝一のウォーミングアップにはキツイ階段が続く。ひたすらに上り続け、ようやく羽黒山神社へ。神社が改装中なことと、バスの時間が気になっていたことで、何の感動もなく神社前を通過。既に待機していた月山8合目行きバスに乗車した。

 有料道路を通ってバスは進む。ハードなウォーミングアップにやられた私は、バスの中で舟を漕ぐ。という間に8合目到着。まずは湿原を周遊するから荷を置いていこうと提案するヒメに対して、そのまま登り始めるのだから荷を持っていこうというマタギさん。マタギさんに軍配があがり、重い重い荷を背負って湿原を散歩。ニッコウキスゲに迎えられ、雪解け近くの沼地には可憐な水芭蕉もあり、時折雨が落ちてきて合羽を着たりしながらも、そこに咲き誇る花々を写真に収める。本格的に登る前に昼食にしよう!雨がいつ落ちてくるのか分からないから、バス停近くのレストハウスに戻ろう!となり、重い重い荷を背負って、元の道に戻る。あー、ヒメの言うことを聞いて、荷を置いていけばよかった。

昼食後、本格的な登りを開始。とはいえ、前に進むたびに新しい花々が出迎えてくれるので、ちっとも前に進まない。でもこれが楽しいのは皆さん、ご存知ですよね。別に急ぐ必要もないので、みなが満足するまで写真を取り続ける。ハクサンイチゲ、チングルマ、ニッコウキスゲ、ワタスゲ、コイワカガミ・・・。

今年は天候不順で花のタイミングが分からないとお嘆きのアナタ。何故、今日ここにいないの?ここにくればもー、前に進めないくらい花が咲いていますわよ。ほれここに、ほれあそこにも。それも一輪二輪なんてけち臭いことはなく、満開の花畑ですわ。楽しいなー楽しいなー。と歩き続けていたが、だんだんと風が強くなり、歩くのがしんどくなってきた。そろそろ今日の歩きはいいかなーと思っていると、突如目の前に現れた建物。これが本日のお宿・
佛生池小屋。

本日の宿泊客は我々とモンベルツアーの団体さんのみ。団体さんは空身で月山山頂に行ったらしい。我々の登頂は明日に繰り延べし、荷を解いて早速宴会を開始した。その頃になると外は強風と雨で荒れた天気に。いやー、羽黒山を早々に切り上げたヒメの判断は正しかったね。それにしても酒は旨いねと、つまみを作りながらも杯を空ける手は止めずに、グビグビと酒をいただく。強風に小屋が飛ばされないよねぇ~と気にしながら、就寝

7/3外は雨風が強い。ヒメが小屋のお兄さんに行程を相談すると「月山は登れないことはない。が、そのまま湯殿山に抜ける道は、この雨で川のようになっていると思う。お勧めしない」と。ヒメが実際に外に出て様子を見るも、風が強くてちーっとも楽しくないとおっしゃる。「山頂はいいよ。こんなに花が多くて楽しい山なら、また来年も来ればいいじゃん」といつものようにあっさりと登頂を断念。もと来た道を戻る。

下山開始。途中、猛烈に風が強い場所あり。普通に歩くために片足を上げた瞬間に突風が!!あぁー!!身体を持っていかれるぅ~。向かい風で前に進めないぃ。どおすりゃいいんだぁぁぁぁ!! 短い距離(&時間)でしたが、風があんなに恐怖に感じたのは初めて。昨日はあれほど「花だ!花だ!」とはしゃいでいたのに、雨風にさらされ、意気消沈。もういいよ、兎に角降りようよと、淡々と下る。

8合目バス停よりバスに乗り、山小屋で手に入れた日帰り温泉割引券が使えるお風呂に直行。・・・のばずが、目的の温泉前では大音量で放送が流れている・・・「湯船に汚物が混入し、洗浄中です。再開は未定です」嗚呼、残念。そのままバスに乗り続け、鶴岡駅に戻る。腹ペコなので駅前の居酒屋でランチ。ランチを待つ間にヒメは次の段取りとして、レンタカー予約開始時間を変更していた。(さすが!)

ランチ後は電車で酒田に移動し、ここからヒメ運転のレンタカー移動が始まる。もう重い重い荷物を背負って歩く必要はない。夕食の買出しをし、温泉にゆったり入ったあと、一路、鉾立山荘に向かう。

鉾立山荘は車で鳥海ブルーラインを上り詰め、山形と秋田の県境にある、設備の整った山小屋だ。ここはガス電気水道が自由に使え、食器や調理器具、ロビーにはテレビまで完備されており、寝具持込ならば1800/人と格安。にほか市が管理している山小屋で、小屋番さんがひとり順番に泊まって管理している。建物の際に立つと、海も良く見える。ここに沈む夕日は綺麗だろう。

本日の宿泊客は我々3人だけ。ヒメに買い忘れたビールの追加購入を頼み、その間に私が夕食の準備をする。今夜は寄せ鍋とウィンナーソテー、漬物だ。ヒメが買ってきてくれたビールを飲みながらちゃっちゃと調理し、出来上がったものをテレビのあるロビーに運んで、宴会開始。明日の天気予報を見ながら食事をしていると、小屋番さんが明日のルートを確認するために、話しかけてきた。

この小屋番さん、話しっぷりからするとツワモノらしい。「毎月一回は鳥海に登りたいね」「同じ場所で写真を撮って、どんな風に変化するのかを見るんだよ」「毎年見ていると、花の咲く時期がどうなっているか、よく分かるしね」「その年に最初に咲いた花(の種類)は確認したいね」「だいたいどこに咲くかは分かるよ」ほらほ~ら、やっぱりツワモノ。彼が撮った写真をテレビに映し出し、お披露目会になった。山開きのお祓いや、雪で埋もれた小屋、雪渓につけた印・・・そんな写真を見えているうちに、あっという間に消灯の
21:00になってしまいました。おやすみなさい。

7/窓の外は真っ白。天気予報どおりだ。天気予報を信じれば、12:00頃から晴れと言っているが、山の天気はどこまで信じてよいのやら。ご飯、味噌汁、漬物、海苔、(私はいらないけど)納豆で満腹になる。景色は見えないし、花を観察できればいいんだから、今日の目標は鳥海湖と決め、超超身軽でスタートする。鳥海湖まではこのあたりの幼稚園登山コースだと、昨日レンタカー屋のお姉さんが話していた。道はよく整備されており、歩くのに全く問題ない。進めば進むだけ、花に出会う。キエビネ、キンポゲ、ショウジョウバカマ・・・賽の河原を過ぎると、更に花の数が増す。

ぱしゃぱちゃと写真を撮りながら進むと、「おそらくここに鳥海湖があるはず」とヒメが言う。が、あたりは真っ白で全く見えない。大きな湖は見えないけど、足元にはかなりの花が咲き誇っている。もう少し前に行くと、違う花に出会えるのでは?と皆で口々に言いながら、予定していた鳥海湖を過ぎ、前に前に進む。といっているうちにマタギさんが「チョウカイフスマが見たい」「チョウカイフスマが見たい」「(今日、帰るけど)風呂に入らなくてもいい」「チョウカイフスマが見れたらそこで帰る」と言い出した。

チョウカイフスマ。白く可憐な花である。昨夜、小屋番さんの写真を見せてもらった。咲いている場所を聞いたけど「(この写真を撮った)場所は・・・どうやって説明すればいいのか?」と言われて、結局咲いている場所は分からない。ヒメ情報では山頂近くに行かないとないという。そもそも山頂を目指す前提じゃないので、出発時間が遅い。では時計と睨めっこで、行けるところまで行くか、チョウカイフスマを見るまで進もう!ということになった。

幼稚園生でも大丈夫な安全道は終わったなぁ~と思った頃、[千蛇谷][外輪山]の分岐が見えた。「これどっち?」「千蛇谷でしょ」ということで、千蛇谷に進む。と、壊れかけたハシゴを降りるはめに。さっきまで安心安全の道だっただけに、超コワイ。ハシゴを降りた後は、崩れた登山道が続く。道端に赤テープを確認しているので道を誤ってはないが、本当にこの道か?と不安がよぎる。危険な道が終わった頃、雪渓が見えてきた。そこに[千蛇谷]の看板。

あたりはガスで真っ白。雪渓は谷に沿って、上に上に延びている。アイゼンは持ってきたけど、まさかここまで来ると思っていなかったので、小屋に置いてきた。アイゼンなしでこの雪渓を登りつめる??否否、それは危険。雪渓とは別に、右手に登る道が見える。こっちに行きましょ!ということで、作ったばかりと思われる急な道を登りつめる。っと、目を疑う光景が!な、なんと!さっきビビリながら降りてきた壊れかけのハシゴがそこに見えるではないか?え?もしかして、危険な道を周遊しただけ?そんな馬鹿な・・・そんな馬鹿だったんです。苦労してぐるりと廻っただけだったんです。

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私は一気にやる気がなくなった。もういい、ここで帰ろうよ。私、お腹空いた・・・とゴネてみたものの、マタギさんの「チョウカイフスマが見たい」の思いは強く、その思いをヒメも後押しする。え~、え~っと言いながらさっき登ってきた急登を降り、[千蛇谷]に戻る。と、さっきまでのガスが晴れている。そのためさっきは見えなかった道がはっきりと見えた。見えた道は雪渓を登りつめるのではなく、左に横断するだけだった。・・・おい!さっき見せておくれよ、無駄に一時間も歩いちゃったよ!

問題の雪渓を越え、登りつめているうちに、天気が急速に回復。青空まで見えてきた。そういえば今朝のNHK天気予報では、昼から晴れると言っていたが、全くそのとおり!天気予報は大当たり!天気が回復し、あたりの景色も良く見え始めると、気分は一気に上がるぅ山をバックにした花々たち。うぅ~ん、いい景色だ!おふたりは写真をばしゃばしゃ撮っている。私も・・・と言いたいが、カメラの電池が既に切れているので、iPadで撮る。カメラに比べて取り出すのが面倒なので、あまり撮れませんでした。

ようやく山頂直下の小屋に到着。あー、疲れたっと座り込む。ヒメはチョウカイフスマを探しに、あたりを熱心に散策している。すると遠くから「あった!」の声。急ぎ現場に駆けつけ、その姿を確認&写真に収める。一輪二輪、咲いている程度であったが、ようやく目的は達せられた。本日、マタギさんは帰京する都合があるので、山頂には行かず、ここで下山開始。

この時点で既に5時間も歩いている。休みらしい休みは取っていない。そうでなくても苦手な下り坂。おふたりに遅れをとりながらも、とにかく歩き続ける。往路で問題になった雪渓を過ぎ、行きに見えなかった鳥海湖を眺め、花と山を眺めながらも、とにかく歩き続ける。ほとんど休み時間をとることなく、4時間後の16:00小屋に到着。あー、長い一日だった。

30分後にはヒメ運転の車に乗り、マタギさんを酒田駅に送る。その後、本日の夕食を仕入れ、お風呂に入り、急ぎ小屋に戻る。この時点で19:00。今日も客は私たちだけだが、一応、21:00には消灯と言われているので、部屋に持ち込んで夕食をとる。今日のメニューはスパゲティーとソーセージ。これにビールと日本酒で乾杯!

それにしても、今日見た花は本当にチョウカイフスマだったのだろうか?こんなときはスミさんに聞いてみれば良い。iPadで撮った写真をスミさんに送信。数分後、「チョウカイフスマで間違いないでしょう」と返信あり。ああ、苦労が報われました。マタギさん、良かったね。

7/朝。隣に寝ていたヒメの姿はない。既に日が昇っている。きっと日の出と共に散歩に出かけたのだろう。私も近所を散策して見る。今日は本当に天気が良い。海岸線がくっきりと見える。

戻ってきたヒメと朝食をとりながら、今日の計画を相談。ヒメが前から行ってみたかったという獅子ヶ鼻湿原を散歩することにし、鉾立小屋をあとにする。朝の鳥海ブルーラインドライブも最高だ!約30分後、誰もいない獅子ヶ鼻湿原に到着。

獅子ヶ鼻とは、変わった形をした巨木のこと。昔、このあたりでは炭焼きをしていたらしく、枝を落としては炭を作っていた。落としたあとから新たな芽が出て、それが長年繰り返されたことで、不思議な形をした巨木が出来上がったとのこと。根元は雪の重さで曲がっているし、本当に不思議な木々が鬱蒼としている。私とヒメしかいない森の中を散歩し、お目当ての
[あがりこ大王]に到着するも、木の周りに近づけないようにロープが張られており、ちょっと残念。周回する散歩コースを戻ると、観光バスが何台か到着しており、現地ガイドらしいおじさんに連れられて、多くの人が森の中に入っていった。わたしたち、相当、早く来ちゃったんだね。
image1.JPGその後、近所にある白糸の滝に立ち寄る。気楽に立ち寄ったはずだったが、滝つぼ近くに下りたので、それなりの階段を上り下りする羽目になりました。

滝のあとは、海を見ながら入る温泉があるとのことで、海岸近くに車で移動。このあたりは九十九島(くじゅうしま)と呼ばれている。昔は約60もの島が浮かんでいたこのあたりは、1804年の大地震で隆起して陸地になった場所だという。そう言われれば、陸地ではあるが小さな島がいくつもいくつも見える。面白い場所だ。(一見の価値あり) ゆったりとお風呂につかり、土産や帰りの電車のつまみを買って、酒田駅まで送ってもらう。充実した楽しい山行でございました。今年の夏はもう十二分に花を見たわ。余は満足じゃ。



                     

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