丹 沢 山
日 程:2005年2月26日〜27日
メンバー:マタギリーダー・タニシ・カネゴン(記)
行 程:大倉〜バカ尾根〜尊仏山荘(泊) 尊仏山荘〜丹沢山〜尊仏山荘〜ヤビツ峠
TVではH2A発射関連のニュースが流れている。事業団のおエライさんが「神社のお参りは、前回とは
逆に廻りました。これは我々の真剣さの表れです」と悲痛な顔で、科学とはほど遠いコメントを出している。
H2A発射延期のお陰で、私を誘ったはずのMiss.Mは待ち合わせ場所の渋沢駅に現れない。残る3名で丹沢
・日だまりハイクに向かうことになった。
電車からくっきりと見えていたはずの山々が、ぼんやりしている。あれれ、雪が降り出した。おかしい・・
・天気予報では快晴のハズ・・・やはり借り物の衛星ではエエ加減な天気予報しか出来ないらしい。今度は
しっかり上げとくれよ!と云いながら、雪の中を歩き出す。
10時少し前、出発。バカ尾根は、わかっちゃいたけど階段ばかり。歩幅があわない階段は妙に疲れる。
それに雪が降っている割には気温が高いようで、雪よけのために着ている雨具のせいもあり、汗がしたたり
落ちる。どうにも我慢出来なくなって雨具を脱いだ。ウェアが濡れているのは雪か汗か、判断がつかない。
立ち止まると身体が冷える。こういうときはしゃーない、トボトボと歩き続けるしかない。
「日だまりハイクのハズが・・・」と、同行するふたりに文句を言われる前にリーダーがつぶやいた。
真っ赤なのぼり「営業中」がはためく茶屋に飛び込み、昼食タイム。店主は「さぁさ、奥に入ってストーブ
にあたって」というが、先客の団体は一向にストーブの前から退く気配はない。適当に空いている椅子に座る。
甘酒を注文して、持参のおにぎりを頬張る。窓の外は本格的な雪。これで風があったら吹雪だろう。あじゃ〜、
ここから先はスパッツ&雨具&帽子が必須だわ。
すっかり冬山装備を身につけ出発。雪はどんどん降ってくる。足下の雪はさほど積もっていないのでアイゼン
は必要ないが、帽子は必需品。帽子からはみ出した髪が、雪の団子になっている。あぁ、階段飽きた。階段は
疲れる。階段はつまらない。もともと展望がない道だけど、なぁ〜んにも見えないから、カメラタイムの名を
借りた休憩もない。早く着かないかなぁ〜。思いの外、下山客が多い。割と軽装なので、早朝の朝日を見て
「こりゃ行ける!」と踏んだ地元の人が日帰りで訪れたのだろうと推測する。
この雪が判っていて日帰り登山を楽しむ人はいないだろう。
階段が終わり、尊仏山荘が見える。小屋に飛び込み濡れた衣服を乾かし、宿泊手続きをする。ストーブで
暖まった身体にビールは旨い!引き続き持参の菊水に突入すべくザックを開く。?ん?ザックの外は濡れて
いないのに、ザックの中がびちょびちょ。あーっ!水筒のお湯が全部出ちゃってるぅ!口は堅く締まっている
のにぃ!ひどい!と騒いでいたら、心配そうにタニシさんが「菊水は無事?菊水は無事?」と尋ねる。大丈夫
よ!菊水さまを撒いてしまうような失態は犯さない。(そういえば以前、酒をザック内に撒いてしまった人が
いましたねぇ〜あれは確か紅葉の那須岳)なんていう騒ぎのあと、夕食までゆっくりとお酒を味わう。H2A、
ホリエモン・・・3人の話題は尽きない。
たっぷりと夕食を食べ、個室をゆったりと使って快眠へ・・・
すっきりと目覚める。「夜中に空を見たら、きれいな星空だったよ」とマタギリーダー。っということ
は今日こそはルンルン日だまりハイクを楽しめるはず。朝食をとっていると、窓には日の出の赤が映っている。
カメラ小僧2人はさっさと朝日を撮りに行ったが、訳あってカメラを持っていない私はゆっくりとお茶を飲んで
から外に出た。富士山は“どうだ!”とばかりに存在感を示し、反対側には海が広がる。江ノ島が見える。
そうそう、ここの、この景色は独特よねぇ。再びこの景色に出会うために、文句を言い言い登って来てしまった
ようなもの。
往復2時間の予定で丹沢山山頂を目指す。「たかが2時間じゃん」ということで、全くの空身。アイゼンを
つけて出発。おーおー、いい眺めじゃ。エビのしっぽは大漁。枯れ木が満開の桜のように華やかである。空は
抜けるような青で、そのコントラストが美しい。雪の下で花芽をつけて、ひたすら春を待つ枝も愛らしい。
カメラ小僧2人は、あーでもない、こーでもないとパシャパシャ写す。訳あってカメラを持っていない私は
手持ちぶさたなれど、カメラを持っていない分、景色を堪能する。気温が上がり、エビのしっぽが枝から外れる
音が響く。透明で澄んだ、ガラスの割れるような音も、これまた美しい。
音は上手く表現出来ないから、是非是非、実際に聞きに行くべきですよ。
結構深い雪がたびたび現れる。トレースがあるものの、太股まで雪があると大変歩きづらい。一所懸命歩いて
いるつもりだけど、なかなか山頂が現れない。結局、山頂まで1時間半もかかってしまった。
喉がカラカラ。山頂小屋で高価なペットボトルを購入し、一気飲み干す。喉を潤し、冷静に辺りを見回すと、
前回訪れたときにはなかったはずの「百名山 丹沢山」というりっぱな看板が立っている。そういえばペット
ボトルを買った小屋も新品。百名山の効用は大きいという証明でしょうか。
記念写真を撮って下山開始。一面の雪原。どうしても衝動を抑えきれずに「わ−−−い!」と身体を雪原に
放り投げた。ふっかふかの雪は冷たいけれど気持ちがいい。少々遊んだあとに再び下山開始。調子に乗って
ざーざーと下っていると、足を取られてすってんころりん! ?ん?あーっ、アイゼンがない!!やばっ!
タニシさんが道を戻って探してくれたけど、見つからない・・・ワンタッチアイゼンは「外れるのも簡単
アイゼン」であった。仕方がない、諦めよう。けど下山はこれからは本格的になるのに・・・タニシさんから
ストックを借り、これを頼りに片足アイゼンで降りることにした。下山は早かろうと予想するも、尊仏山荘には
1時間半後に到着。片足アイゼンでもヤビツ峠を降りられるか、マタギリーダーが小屋の人に確認してくれる。
まぁ行けるだろうということになり、予定のコースを降りることにした。下山に要する時間は約3時間。何とか
なるかなぁ、と思ったのが甘かった。
昨日の雪はどこもかも深く、3時間は夏道の所要時間であることを失念。細い尾根道は「滑って落ちるの
では?」との恐怖心から、おっかなびっくりへっぴり腰。登りは、まるでカゴの中のコマネズミで、つるつる
と滑り、前に進まない。加えて気温が上がって雪が溶けてきたので、頼りのアイゼンには高下駄のように雪が
付き、これを剥がし剥がし進まなければならない。雪を落とすために、くそっ、エイ!と近くの幹を蹴飛ばし
たら、エビのしっぽがバラバラと落ちてきて、自滅。今年はどうも星回りが良くないらしい。毎々、何か問題が
発生する旅が続いている。
小腹が空いたので、早めの昼食をとる。地図で確認しても、ヤビツ峠までまだ3分の1しか進んでいないこと
にガッカリ。今日は長い一日になりそうだ。昨日と違い展望も良く、道は変化に富んでいて、天気が良い。
確かに今日は日だまりを歩いてはいるが、「ハイク」というには語弊がある。やはりこれは冬山登山と云うべき
でしょう。侮るなかれ、山旅。
鎖場登場。鎖場をアイゼンで登るのも怖いけど、アイゼンがないのも踏ん張りが効かなくて怖い。どちらが
いいとも言えないが、いやはや、無事に乗り越えることが出来て良かった。身体がほてった汗と、登れないかも
という冷や汗がない混ぜである。
今日は本当に天候が良いようで、ハンググライダーやパラグライダーが、悠々と空を舞っている。我々の
頭上近くを飛んでおり、「木の枝に引っかかりはしないか」と冷や冷やしながら眺める。
ようやく下りらしい下りが始まり、樹林帯に突入。雪は少しずつ減ってはいるものの、雪道にはかわりない。
アスファルトだぁ!降りたぁ!アイゼン・スパッツを外し、身軽になる。ここで身軽になり過ぎたことが敗因
だったのだろう。降りた場所は富士見、目指す場所はヤビツ峠。峠越えをしていないのにうっかり下りの道を
選んでしまった。タニシさんが何度もマタギリーダーに「この道でいいんですね?」と尋ね、不安になった
リーダーが地図を見たときは、既に20分以上もロスしたあと。「途中にあった喫茶店から、タクシーを呼び
ましょう!」と私が叫び、2人は早々に喫茶店を目指す。あっ!閉店してるぅ、さっきまで開いていたのにぃ〜
と騒いでいたら、女性が「コーヒー、飲みますか?」と声をかけてきた。店のオーナーらしい。「タクシーを
呼び、待っている間にコーヒーを」というと「タクシーは秦野から来るので時間がかかる」との説明。飯豊山の
ときの“Miss.K恨めしげ視線”が私には不足しているようで、ヒッチハイク失敗。
トボトボと歩き出す。既に電池切れ寸前。早く歩こうにも歩けない。こりゃ、バス停に着いたときは暗く
なっているかも・・・と諦めて歩くこと約20分。後ろから車が近づいてきた。先程の女性である。「どうぞ」
と手招き。えっ!乗せてくれるの!ラッキー!ドライバーはとても上品な奥さま。横浜のアメリカンスクールを
卒業後、ドイツに音楽留学したお嬢さんがいるらしい。そのお嬢さん、今じゃ新宿を拠点にライブハウスで
ジャズの弾き語りをしているとか。(一度聞きに行ってみよう!)年に2度ほど、喫茶店奥にある建物で
100名程集めたコンサートなども開くらしい。(面白そうねぇ)などなど興味深い話を聞きながら、なんと、
秦野駅まで送って頂いた。なんてイイ人だ。日本も捨てたモンじゃない。
星回りが良くない今年は、どうも失敗続きでもありますが、その分、人の情けが身にしみることもしばしば。
人が困っているときは、出来る限り手助けすべきですね。“情けは人のため成らず”うんうん。親切な奥さま
に助けられたことで、明るいうちに電車に乗り込むことが出来、19:00前に自宅に到着。その頃には既に
筋肉痛の予感があり、近所の銭湯でジェットバスに身を浸し、今回の山行をゆっくりと思い返す時間を作る
ことが出来ました。いやぁ、極楽、極楽。
ザックお湯浸し事件や、アイゼン紛失事件など、今回もまたまたご心配をおかけする山旅となりましたが、
マタギさんにタニシさん、次回もよろしゅうお頼み申します。
そうそう、今度から天気予報がハズレたら「Miss.Mのせい」ってことなりました。しっかりするよう
に言い聞かせてくださいね、H2Aに。
(Photo:マタギ&タニシ)
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