西 穂 高 岳


 日  時 2005年8月26日〜27日
 メンバー すみ隊長、二等兵、Todo&Hana、キヨノ、カネコ(記)

 長年愛用してきたシリオがとうとうイカれた。信頼できる山靴がない人生なんて、私にとっては一大事。 いそいでGoroに走り、多くの人が愛用しているブーティーを購入。足慣らしをしなくちゃなぁ〜と思い つつも、急遽決まった北アルプス山行に来てしまった。でも今回は西穂だもん。ロープウェイですぃ〜っと 登って、楽々山行だから大丈夫さ!とベロベロになめている。参加メンバーには「新品の靴で来るなんて、 まるでT氏だ」と、かつて新しい靴で旅をして足を痛めたT氏が話題になる。

 登山者用の無料駐車場に、むりやり二台の車を止める。隣の車と平行するべきか、はたまた道路に平行して 駐車すべきか、二等兵はひとり悩み車を何度も微動させている。ようやくポジションも決まり、身支度を 済ませ、ロープウェイに向かって歩き出す。すると徳島ナンバーの小型バスが目に入る。
 もしや・・・と近づくと、見覚えのある顔。昨年、飯豊山で出会い、阿波踊りに誘われ、社交辞令が わからないマタギ・キヨノ・カネコは、つい先日、出会った人を頼りに、阿波を訪ねたばかり。その山岳会の バスだったのである。
 徳島からひとり長距離を走ってきたドライバーは、会のメンバーが登山をしている最中は車でお昼寝。そう、 自分は登らないのに、メンバーのサポートのために運転を買って出ていると言う、奇特なお方なのである。 我々が阿波踊りのついでに剣山に登りたいと言ったときも、彼が運転して麓まで乗せてくれ、帰りの温泉に、 最寄の駅まで送ってくれた。
 眉友山の会というその山岳会は、本来ならば鷲羽・水晶を縦走だったが台風に阻まれたため、日程を短く して、今は笠ヶ岳を目指して笠新道を歩いているという。かつてオザワさんが涙し、イシノが幽霊なった笠新道。 皆さんによろしく!と言い残し、別れた。

 ロープウェイは観光客でいっぱい。2台のロープウェイを乗り継いで、あっという間に山頂駅。「ここから 歩いて1時間半で西穂山荘でぇ〜す」とすみ隊長が言うと「着いたらビール?」と歩く前から話題はひとつ。
 新しい靴は快調で、当たるところも痛い箇所もない。ただシリオに比べて幅が狭いため、小さな私の足が、 尚一層小さく見える。これで上半身まで小さいといいのだけれど、丈は短いが横幅はたっぷりの私の体型には 不釣合いで、いまいち格好が悪い。
 西穂山荘まで歩く人もチラホラ。写真を撮りにいくのだろう。例の如く、べらべらとしゃべりながら歩いて いたら、あっ!という間に西穂山荘に着いてしまった。所要時間1:15.途中でわざと休憩まで入れたのに。 私にとっては良い足慣らしの距離ではあったが・・・

 台風一過の好天を期待したが、思ったよりも雲が多い。明日は晴れるよ!とビールでお清め。昼食とともに 持参したつまみやワインが並び、むしゃむしゃと飲み食いしながらおしゃべりは続く。「このペースじゃ、 夜まで持たないね」と心配顔のすみ隊長。昼寝をする人まで現われた頃、ようやく山荘に入れることになった。 まだ誰もいない山荘で、いい具合に酒が廻ったメンバーは、冷凍マグロのように横になり、すやすやとお昼寝。 こういう暢気な山行も、ある意味贅沢だぜ、

 翌日は4:30起床。余計なものは山荘に残し、まずは独標を目指す。朝露が身体を濡らす。私たちよりも 先に出発した人達は、ジャンダルムを越えていくのだろう。危ない危ない。私には縁のない世界だから。明るく なり始めると、霞沢岳や笠ヶ岳が見えてくる。深い谷間までくっきりと。空が焼けている。何とも言えない色だ。

 写真小僧軍団と化したメンバーは、思い思いにシャッターを切る。が、所詮写真。実物には敵わない。 すっかり明るくなったら、猛烈にお腹が空いてきたので。すみ隊長にお願いして朝食タイムとしてもらった。 二等兵が剥いてくれた梨が旨い。が、風をよけて座ったのに、寒い!早々に朝食を切り上げ、再び歩き出す。 どんどん近くの山が見えてくる。焼岳、乗鞍岳・・・北の山並みが一望である。
 来た甲斐があった!年に一度はこの景色を見ないと、調子がいけない。

 辺りを見ながら進むと、やがてガラガラとした道に出た。歩きづらい。立ちふさがる岩も現われ始めた。 あぁ、こういう道は嫌いだ。バランスが良くない私にはとても苦手な道。何とか独標にたどり着く。立派な 標識の前で記念写真。ここで私はもうたくさん。帰るわと発言するや否や、キヨノの鋭い「えっ!」の声。 「さっ!行くわよ!」の号令に逆らうほどの勇気を持ち合わせていない私は、しぶしぶついていく。
 ほれぇ、いきなりの難所じゃんかぁ。どこに足を着いたらイイのよぉ。こういう見えない道は嫌い。つぶれ た蛙のような体勢で、やっとこさ、最初の下りを過ぎるが、難所は次々とやってくる。あぁ嫌い。あぁ嫌い。

 ピラミッドピークに到着。私ゃ、ここから先は是が非でも行きませんですぜ。だってこの道、引き返して くるんでしょ?もちろん、ジャンダルムを越えるわけないんだから。見える景色はここも山頂も一緒よ。私ゃ ピークハンターじゃないからここで十分。北アルプスを楽しみました、皆さん、先に行ってください。っと お尻に根を生やした。するとTodoも「俺ももういいやぁ」となり、結局、Hanaを加えて3名がここで、 残る精鋭を見送ることにした。

==以降、精鋭組・すみ隊長の登頂報告==
 ヒヤヒヤ箇所は、実は”ピラミッド”まで。そこから西穂は、見かけほど大変ではなかった。危険箇所 は西穂山頂直下のみ。と言いつつ、gyoshoさんはいつの間にか前々々々々々々の人をいつの間にかスキップ してて、7:45前にフラーイング着。槍を始め、北アルプス/裏銀座コース、剣・立山方面も望め、展望 はすこぶる良好。やっぱり来ただけの甲斐はあり。皆、いい笑顔。
 帰りのすれ違いが気になったので、早めに出発。幸い、問題の”ピラミッド”まで、そんなにシビアな すれ違いはなく、ホッとした次第。
==以上、すみ隊長報告終わり==

 勇気ある決断を下した3名は、下山を開始。途中、50名程の団体さんのすれ違いをやり過ごすために、 20分強の休憩を余儀なくされた。アルパインツアーの団体は、要所要所にザイルを背負い、カタビラを ジャラジャラいわせたガイドがいるという物々しさ。それでも止めたほうが良いかも・・・というひとも チラホラいる。そこに崖を駆け上る女性一名。団体とは別のこの女性は、ぐずる団体の横を、スパイダーマン のように駆け抜けた。カッコイイ。

 独標まで到着すると、どう見ても止めたほうがいい人が、次々と西穂を目指して難所を下っていく。 中にはペットボトルを片手に降りていこうとするおじさんもいる。思わず「両手が空いていないと歩けません よ」と注意すると、「そうなったら落ちるだけだ」とヘラヘラと答える。「あのね、アナタが落ちるだけなら 良いけど、そのペットボトルを落として、下の人に当たったりしたらどうするんですか!」と言い返して みたが、私の忠告を無視して先に行ってしまった。全く!人のことも考えろよ!マナーの悪い大人だ!

 ところどころで写真を撮りながら、ゆっくりと山荘まで下山。冷や汗分の水分をビールで補充し、精鋭が 帰るまで昼寝・・・と準備をしたらもう帰ってきてしまった。さすがは精鋭。勇気ある決断組みに「ピラミッド ピークから先は、もう怖いところはなかったよ。残念だったね」と惜しがらせるような発言を繰り返していたが、 ちぃ〜とも後悔なんかしていないもん。

 すみ隊長のワンタンスープに舌鼓を打っている頃、頭上にはヘリが飛んでいった。荷揚げのヘリではなさそう で、何か事故でもあったか?と話していたが、その時点では情報はなくわからなかった。さて、荷をまとめて ロープウェイまで下山。あっ言う間に駅に着き、暑い暑い下界へ下った。

 夏休み最後の週末とあって、帰路は渋滞が予想されたが、2台のドライバーが頭に刻まれた抜け道Mapと ドライブテクニックを駆使し、渋滞を避けて順調に帰宅が出来た。毎度のことながら、ドライバーには感謝 感謝である。

 翌日、山荘で見たヘリが気になってネットで山の事故を検索したところ、西穂・独標付近で女性の滑落事故が あったことがわかった。時間的にも我々は独標を通過した時間に差がない。
 "己を知る“大事なことである。

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